診療科・部門のご案内

脊椎脊髄センター

代表的手術

椎体形成術(VP、BKP、VBS)

対象となる疾患:脊椎圧迫骨折や転移性脊椎腫瘍による病的骨折など

対象となる疾患は、脊椎圧迫骨折や転移性脊椎腫瘍による病的骨折などです。原則、手術翌日より軟性もしくは硬性のコルセットを装着し、起立・歩行を開始します。単独で行うこともありますが、固定術と一緒に行うこともあります。単独で行う場合には、全身麻酔下に約5mmの皮切2ヶ所から細い筒を骨折椎体に挿入し、人工骨やセメントを注入して、骨折を人工的に接合します。

BKP

細い筒から骨折したせぼねに
風船をしぼめた状態で設置して、
ゆっくり風船を膨らませます。

膨れた風船が骨折した骨を
復元します。

風船を取り出して空いた
スペースにセメントを注入します。
VBS

VBS後 正面像

VBS後 側面像

BKPと同様に細い筒から骨折したせぼねに風船をしぼめた状態で設置して、ゆっくり風船を膨らませます。風船でステントを広げてスペースを作り、風船を取り出してステントとともにセメントを注入します。

椎体形成術(VP、BKP、VBS)および後方・後側方脊椎固定術

対象となる疾患:脊椎圧迫骨折や転移性脊椎腫瘍による病的骨折など

椎体形成術でセメントや人工骨を注入して、骨折を人工的に接合します。椎体形成術のみでは固定性が弱い場合や骨脆弱性が強い場合には、スクリューなどを用いて脊椎を安定化させます。原則、手術翌日より軟性もしくは硬性のコルセットを装着し、起立・歩行を開始します。

(左)第12胸椎および第1腰椎の骨粗鬆症性椎体骨折を認めます。(中)MRIでは第1腰椎に大きな骨欠損を認め、骨折が難治性で不安定であることを示しています。(右)第1腰椎に椎体形成術を施行し、さらに骨が脆かったため、頭尾側にスクリューを挿入して固定しています。

最小侵襲脊椎安定術(Minimally Invasive spine Stabilization: MIStミスト)

対象となる疾患:脊椎圧迫骨折、転移性脊椎腫瘍、化膿性脊椎炎、びまん性特発性骨増殖症など

従来の切開手術に比べ、身体に対する負担が少なく、また術中・術後の出血量が少なく、輸血率も少ないことが報告されております。原発性の脊椎腫瘍や転移性脊椎腫瘍では、全摘出を行うことで根治的治療が見込めることがあり、後述する腫瘍脊椎骨全摘術(TES)を行うこともあります。

転移性脊椎腫瘍や化膿性脊椎炎に対するミスト手術

ご高齢の方や、転移性脊椎腫瘍や化膿性脊椎炎を発症する方などは、体力や免疫力が低下していたり、糖尿病、心疾患、肝疾患、腎疾患などの併存疾患などにより、大きな手術を受けることが難しいことがあります。体にかかる負担の少ないミスト手術が有用です。

(1)

(2)

(1)胸椎に肺癌の転移性腫瘍を認めます。脳転移などもあったため、根治的手術は困難でした。
(2)経皮的椎弓根スクリューを用いた特殊な方法で、脊椎を安定化しています。
 術後、麻痺の改善と疼痛の緩和を認めました。

腰の第4番目、5 番目の椎体が感染し、進行性の骨破壊と後弯変形を認めます。経皮的椎弓根スクリューを用いた特殊な方法で、脊椎を安定化しています。

(左)術前の進行性の骨破壊が見られましたが、(右)術後1年では良好な骨癒合が得られています。

びまん性特発性骨増殖症、強直性脊椎炎に対するミスト手術

びまん性特発性骨増殖症や、強直性脊椎炎という、せぼねが連続して癒合(くっつく)してしまう病気があります。脊椎が癒合していない部分で狭窄を生じたり、軽微な外傷でも骨折を起こし、脊髄を圧迫して神経障害が出現することがあります。当院では、体にかかる負担の少ない経皮的椎弓根スクリューを用いた特殊な方法で、脊椎を安定化させるミスト手術を積極的に行っております。

連続性に骨が癒合している間に骨が癒合していない部分
があり、同部位で狭窄が生じ脊髄が圧迫されています。

経皮的椎弓根スクリューを用いたミスト手術で、低侵襲
に脊椎を安定化し、神経症状は著明に改善しました。

転移性脊椎腫瘍に対する腫瘍脊椎骨全摘術(Total Enbloc Spondylectomy: TES)

脊椎腫瘍では脊椎骨が原発腫瘍やがんの転移腫瘍に占拠された結果、骨を破壊し脊柱の支持性がなくなり局所の痛みを生じます。さらに、腫瘍が脊髄や馬尾神経を圧迫して痛みや神経麻痺を引き起こします場合もあります。その他、脊髄や神経根の圧迫の症状として歩行障害、病的反射、腱反射亢進、膀胱直腸障害、肋間神経痛(胸部痛、しびれ)などが生じます。腫瘍が胸椎にあれば背中からのみで手術を行い、腰椎にあれば周囲の組織を安全に避けるために脇腹からの手術も追加します。

胸椎の腫瘍の場合

背中の皮膚を切開します。摘出する椎体の頭尾側にスクリューを設置し、ロッドで接続して脊椎を強固に固定します。後方より、肋骨を切除し、椎体前面、側面を剥離して、脊髄をよけながら、腫瘍に侵された椎体を一塊として摘出し、同部位に金属性のメッシュに局所骨あるいは腸骨を設置します。

腰椎の腫瘍の場合

まず、横向きの体位としてわき腹を開腹し(正中から開腹する場合もあります)腫瘍に侵された脊椎周囲を十分に剥離を行います。その後、体位をうつぶせに変えて後方より、脊髄をよけながら、腫瘍に侵された椎体を一塊として摘出し、同部位に金属性のメッシュに局所骨あるいは腸骨を設置します。
十分に洗浄し、出血がたまらないようにドレーンと呼ばれる管を留置し、縫合糸をもちいて筋肉と皮膚を創ごとに縫合します。

腎癌の胸椎転移に対するTES手術

術前MRI T2像  術前MRI T1像

術後 X線  摘出された椎体