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2023.07.15

熱中症対策について救急科部長からのメッセージ

異常な猛暑で熱中症が心配な日が続いています。水分補給や冷房使用、炎天下での作業控えなど、分かっていても自分は大丈夫と思いがちです。熱中症の予防と対策、熱中症になってしまった場合、病院に行くかどうか迷ったときのチェック方法などについて、救急科の志賀隆教授がご紹介します。

国際医療福祉大学成田病院 救急科部長
国際医療福祉大学 医学部 救急医学教授(代表)

志賀 隆  (しが・たかし)

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熱中症の「予防」「どんな時に注意べき?」「熱中症になったときの対策」

【予防について】
① 活動時間
熱中症発症のピーク時間は、昼間の12時および15時前後とされています(『熱中症診療ガイドライン2015』より)。
外回りの仕事や庭仕事、運動など、屋外に出なければならない場合は朝か夕方に設定し、日射しの強い時間帯の外出を避けることが理想です。また、会話がなければマスクは不要です。

② 体を暑さに慣らす「暑熱順化(しょねつじゅんか)」
暑熱順化が進むと発汗量などが増加し、体の表面から熱を逃がす熱放散がしやすくなるので、短い時間から運動などを始め、5~7日ほどかけて徐々に体を慣れさせる。屋外での活動は7~14日の間で増やしていくことが望ましいです。新しく屋外での仕事に就いた方は、屋外労働を、1日の労働の20%までに制限するのが必要です。屋外労働経験者も、いきなり1日屋外労働をようなことはお勧めしません。1日目50%、2日目60%、3日目80%、4日目100%などと増やしていくことを推奨します。

③ 『暑さ指数』を参考に
気温と湿度から計算される「暑さ指数」を参考に、指数が高い時には対策を強化してください。

④ 水分と塩分補給
1時間に1回の休憩と15分に1回の水分補給を忘れずに。喉が渇いていなくても少しずつこまめに水分を取りましょう。
高齢の方は暑さや喉の渇きを感じにくいことがあるため、周囲の方が声をかけることも大切です。睡眠中でも熱中症になりますので、寝る前にコップ1杯の水を飲み、快適な室温を管理してください。

⑤ 仕事やスポーツをする際には2人組で行動を
1人ではなく2人での行動を推奨します。定期的に水分補給を促し合うことができますし、熱中症では突然意識を失うこともあり、山や畑など人目につきにくい場所で倒れると発見が遅れてしまうため、熱中症の危険性が高い日や時間帯は、できるだけ1人での行動は避けましょう。

【どんな時に注意すべき?】
ご自分でも気づきやすい熱中症の代表的な不調や症状は次のものがあります。
・めまいがする ・だるい ・気持ちが悪い ・頭が痛い ・こむら返り(ふくらはぎの筋肉がつる) ・悪寒がある
高温多湿の暑い環境にいるときや、暑い環境下でこのような症状が現れたら、熱中症の可能性を考えましょう。 動けなくなってしまった、自分で水分を取ることができない、意識が悪くなっている、呼吸がおかしい、などの症状があれば救急車を呼ぶことも考えてください。

【熱中症にかかったときの対策】
① 早めに休むこと
体育の授業中や仕事中に熱中症かもしれないと感じたら、軽い症状であっても先生や上司、周囲の人に伝えましょう。学校での部活動中や校外学習中に起こった深刻な熱中症報道もありました。熱中症を発症した方の中には、短時間で状態が急速に悪化する方もいますが、どんな方が重症化しやすいのか完全に分かっているわけではありません。 そのため、だるさや立ちくらみなどを感じたときには、「言いにくい」などとためらわず、周囲に体調不良を伝えて休息をとりましょう。

② 水分と塩分の補給
塩分を含んだ飲み物を摂取しましょう。経口補水液はすぐに手に入らないことも多いため、自動販売機やコンビニエンスストアでも購入できるスポーツドリンクを飲むことをおすすめします。
※水とスポーツドリンク、どちらを選ぶべき?
熱中症とは、体内から水分だけでなく塩分(ミネラル)も失われている状態です。水とスポーツドリンクを選べる環境にある場合は、常にスポーツドリンクを選択してください。

③ 風通しをよくするために衣服をゆるめる
ぴったりした服は体温がこもるので、衣服をゆるめるか、ゆったりした服を着用するようにしましょう。
保冷剤や濡れタオルがあれば、首筋、脇の下、太ももの付け根など太い血管が通る場所に充てて冷やすことも効果的です。

【病院に行くべき場合】
意識がおかしい、呼吸がおかしい、など普段とちがった症状があればすぐに救急車を呼んでください。一方、現れている症状が軽く、ご紹介したような応急処置で状態が改善していくようであれば、静かに休んで様子をみてください。

私たち医師は、患者さんの症状、診察所見や血液検査等の結果から重症度を判断して治療を選択します。
しかし、一般の方は重症度合にとらわれる必要はありません。軽度であっても早い段階で点滴治療などを受けることで、よりスムーズな日常生活への復帰が可能です。
熱中症かもしれないと感じたときには我慢しすぎることなく病院へご相談ください。

環境省『熱中症環境保健マニュアル2018』を参考に作成

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