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消化器外科

そけいヘルニア

一般的には「脱腸」と呼ばれる病気で、鼠径部(股の付け根)が膨らんできます(図1)。鼠径部はもともとお腹の壁が薄い場所で、この部分が加齢とともに非常に弱くなり、40歳以上の男性に多く起こります。腹圧(お腹に力を入れたり、立ったりすると加わる力)がかかると、腸などの内臓が飛び出て膨らんできますが、腹圧が解除されると鼠径部の膨らみも元に戻ります(図2)。ヘルニアがひどくなると違和感が強くなったり、痛みを認めたりすることがあります。脱出した腸が嵌頓(かんとん。はまり込んで抜けなくなった状態)すると腸閉塞の状態になり嘔吐・腹痛の症状が出ます。嵌頓した状態が続くと、腸管の血流不全で虚血壊死に至ることがあり、緊急手術が必要になることがあります(図3)。

図1

図2

図3

治療

鼠経ヘルニアは薬で治ることはなく、手術以外に治療法はありません。手術は弱くなったお腹の壁の部分にメッシュと呼ばれる人工のシートをあてがって補強します。手術方法は世界的には前方切開法(鼠径部の皮膚を切開する方法)と腹腔鏡手術(腹腔鏡を用いて小さな傷で行う方法)があります。当院では前方切開法、腹腔鏡手術のいずれでも手術を行っていますが、体に優しく痛みが少ない腹腔鏡手術を標準術式として行っています。

手術方法:腹腔鏡下ヘルニア根治術

臍とその左右の計3か所に1cm程度の小さな穴をあけて腹腔鏡手術を行います。
写真のようなポートと鉗子を用いて腹腔鏡手術を行い、ヘルニアを修復します。

写真1

図4

写真2 手術中の様子

腹腔鏡手術の手術痕

いずれの傷も小さくすんでいます。術後経過とともに傷の赤みは消え、さらに目立ちにくくなっています。

全身麻酔が必要となりますが、前方切開法に比べて傷跡が小さく目立たないのが特徴です。手術による痛みが少ないため、早期に職場への社会復帰が可能となっています。また、ヘルニアをお腹の中から観察できるので、小さなヘルニアを見落としにくい、左右両側にヘルニアがあっても傷を増やすことなく手術ができるなどの利点があります。 術後は痛みに対するコントロールと慣れない手術後の不安の軽減を考え、安心して社会復帰して頂けるよう、3~4日程度の入院をお願いしております。

我々の強み

当院では術後の創部痛や切開創の整容性を考慮して腹腔鏡手術を基本として行っていますが、前方切開法に比べて高度な技術を有する手術となっています。当院には2016年より日本内視鏡外科学会技術認定医が着任して以降、腹腔鏡手術では、より安全性の高い確実な手術を提供しております。術前診断から手術、術後経過やリハビリに至るまで、早期に日常生活へ復帰できるよう一貫した診療を行っています。

鼠経ヘルニア外来(月~土曜日午前・午後)

当科では月~土曜(午前・午後)いつでも、そけいヘルニアに対応可能な消化器外科医が交替で外来を行っております。
すべて10年以上の臨床経験を有する消化器外科専門医が責任をもって治療に当たります。

①鼠径部に不快感や痛みを感じる
②立った時やお腹に力を加えたときに、鼠径部の膨らみを感じる
③膨らみは指で押さえたり横になると引っ込む
これらの症状がある時は、一度ヘルニア外来へご相談ください。